TOC (Theory of Constraints) 制約理論
ティーオーシー
TOCとは、世界的なベストセラーとなった『ザ・ゴール』の著者であり、物理学者でもあるエリヤフ・ゴールドラット博士が開発した全体最適のマネジメント理論である。部分の改善ではなく、組織全体で最大のアウトプットを出すことを目的としている。日本では「制約理論」と訳される。
TOCの基本的な考え方は「つながり」と「ばらつき」のある組織の仕事の流れの中では、どこかに必ず制約があり、その制約に集中して改善すれば組織全体に成果をもたらすとことである。このシンプルなコンセプトによって、キャッシュフローを改善し、スループットを生み出し、短期間で飛躍的な成果を出すことを目的としている。具体的には、以下の「5つの集中ステップ」(5 Focusing Steps)を用いて、制約の改善に集中することで全体最適のマネジメントを行うことを推奨している。
制約を見つける
制約を徹底活用する方法を決める
制約にその他すべてを従属させる
制約の能力を高める
この制約が制約でなくなったらステップ1に戻る
『ザ・ゴール』では、ボトルネックに注目して工程を全体最適化する実現するドラム・バッファー・ロープという手法が紹介されている。JITとTOCは生産工程の効率化で比較される手法であるが、一般に工程が複雑で生産の同期化が難しい場合にはJITよりTOCの方が向いていると言われている。なぜならば、システムが複雑で「ばらつき」が大きければ大きいほど、制約に集中するレパレッジが大きくなるからである。
TOCの大きな特徴は、社会科学の領域に自然科学で幅広く活用される「原因と結果(因果関係)」という考え方を、人が絡む組織の問題に適用したことである。「自然科学における『理論』と同じレベルの再現性のある科学を、社会科学の領域に持ち込んだ」と、ゴールドラット博士は語っている。
TOCによる改善活動が描かれている『ザ・ゴール』の舞台が工場だったため、生産現場の改善手法と捉えられがちだが、サプライチェーンマネジメントの理論的な基礎となっただけでなく、プロジェクトや流通、小売り業、IT、保守整備(MRO: Maintenance Repair Overhaul)会計、営業、教育、イノベーションなど、「つながり」と「ばらつき」のある前提がある、さまざまな領域で活用されている。